Writer
やまうち しょうご
株式会社デジタルフォワード代表取締役/DXコンサルタント。旅行代理店からIT業界へ転身。Booking.com(外資IT)、アクセンチュア(外資コンサル)、CYDAS(日系IT)、フリーランスPMでの実務経験を経て株式会社デジタルフォワードを設立。業務改善・ツール導入・自動化支援を展開。伴走型コンサルとして中小企業を支援。英日バイリンガルでの対応も可能で、研修講師や戦略立案支援も行う。沖縄県在住。
こんにちは。株式会社デジタルフォワードの山内です。
「DXって、結局どんな成功例があるの?」
そんな声をよくいただきます。
ニュースでは「DX成功!」と華やかに報じられる企業も多いですが、
実際にはその裏側に試行錯誤や失敗の積み重ねがあるものです。
この記事で分かること
セブン銀行は、ATMを単なる現金端末から
「デジタル窓口」へと進化させる取り組みを進めています。
初期段階から、以下のような革新的なサービス導入が行われました:
顔認証入出金(FACE CASH)
セブン銀行ATMに顔情報を登録すれば、カード不要で顔認証と暗証番号で取引可能。
公式サイト:セブン銀行 FACE CASH
関連インタビュー:DX推進とFACE CASHの背景
スマホATM
スマホアプリでQRコードを読み取り、アプリ経由で現金入出金操作が可能に。
公式サービス概要:スマホATM
公的証明書受取
マルチコピー機を活用し、住民票などの公的証明書を受け取る仕組みを導入。
セブン銀行公式:ATMとマルチコピー機の取り組み
+Connect
マイナンバーカードを証明書として利用し、口座開設や住所変更など窓口対応をATMで完結可能に。
Impress Watch記事:セブン銀行の+Connect詳細
このように、ATMは「お金を引き出す場所」から
「行政/金融サービスを提供するプラットフォーム」へと進化を遂げています。
こうした先進的な取り組みも、最初から順風満帆だったわけではありません。
実際には多くの障壁と地道な対応が伴っていました。
現場との折り合い
導入当初、顔認証やスマホATMに慣れていない高齢の利用者から
「難しそう」「怖い」という声が多数寄せられました。
そのため、セブン銀行では店舗スタッフがATM前で直接利用案内を行い、
カードと暗証番号での手順と顔認証の流れを
実地で教えるカップリング支援セッションを実施。
加えて、全国7,000店舗以上に教育マニュアルを配布し、約1か月をかけて重点対応しました。
技術的な信頼性の確保
顔認証機能には、
米国国立標準技術研究所(NIST)の精度ランキングで上位評価を受けた
NEC製顔認証エンジンが採用されており、マスクやサングラス使用時にも
誤認を防ぐライブネスチェック機能が導入されました。
この高い安全性と精度が、セキュリティに敏感な顧客層の不安を軽減しました。
運用面の負荷
新ATM導入時期には、ATM稼働状況の監視頻度が通常の2倍になり、
問い合わせ窓口の電話対応が約1.5倍に増加。
また、ATM設置店舗では「操作に時間がかかった客が後ろに並ぶ」
などの混雑トラブルも発生しました。
対応策として、
リアルタイム稼働監視センターを強化し、
お問い合わせスタッフの専用研修とマニュアル整備を実施。
さらに、ATM近くに案内ポスターを設置し、混雑対策もしっかり行われました 。
このように、技術の導入よりも
「使われる仕組み作り」にこそ本当のハードルがあり、
それをひとつひとつ解決していく地道な努力が成功の鍵だったのです。
大企業の事例を見ると、「うちは関係ない」と感じるかもしれません。
でも、学べる本質は中小企業にも共通しています。
現場視点を無視しない
技術より“仕組みと人”を考える
小さく始めて、改善を繰り返す
この地に足のついたアプローチこそ、DX成功への近道です。
「華やかな成功の裏側」を冷静に見ることが、DXを現実的に進める第一歩です。