2026/6/29

【沖縄 DX事例】職人の勘をスマホで見える化。宮古島に学ぶ、伝統産業を次世代に繋ぐスマート化のヒント

Writer

やまうち しょうご

株式会社デジタルフォワード代表取締役/DXコンサルタント。旅行代理店からIT業界へ転身。Booking.com(外資IT)、アクセンチュア(外資コンサル)、CYDAS(日系IT)、フリーランスPMでの実務経験を経て株式会社デジタルフォワードを設立。業務改善・ツール導入・自動化支援を展開。伴走型コンサルとして中小企業を支援。英日バイリンガルでの対応も可能で、研修講師や戦略立案支援も行う。沖縄県在住。

こんにちは。デジタルフォワードの山内です。

「うちの仕事は、ITなんかじゃ置き換えられないよ」と、沖縄の地場産業や一次産業の現場を支える経営者様から、よくそんな声を伺います。

しかし、宮古島ではいま、伝統や職人の技を守るためにテクノロジーを賢く使う新しいスマート化の波が起きています。

今回は、公式事例集から、中小企業の皆さまにもヒントになる宮古島の成功事例を2つ厳選しました。

現場を置いてけぼりにしない沖縄らしいDXのリアルを、サクッと10分でお届けします。

事例①【沖縄の農業×IoT】ベテランの勘をデータ化。マンゴーのA級品が3倍に

沖縄を代表する高級フルーツ マンゴー。

宮古島でも盛んに栽培されていますが、実は非常にデリケートな果物です。

台風や日照時間、日々の気温や湿度の変化に合わせ、ビニールハウスの換気や水やりを絶妙にコントロールする必要があります。

これまでは、熟練の農家さんが毎朝ハウスに足を運び、肌で感じる空気や土の乾き具合といった「長年の経験と勘」だけを頼りに作業が行われてきました。

しかし、ここには2つの大きな課題がありました。

1つは、気候変動によってこれまでの勘が通用しない年が出てくること。

そしてもう1つは、その素晴らしい技術を若い世代へ言葉で伝えるのが難しいという、後継者不足の悩みです。

そこで宮古島のマンゴー農家が挑戦したのが、センサーを使ったデータの見える化(IoT)でした。

①-1. ハウスにセンサーを置き、スマホで見る

導入したのは、難しいシステムではありません。

ビニールハウスの中に小さなセンサーをいくつか設置し、温度、湿度、日射量、土壌の水分量を自動で計測する仕組みです。

農家さんは、わざわざ遠くのハウスまで何度も見に行かなくても、手元のスマートフォンを見るだけで、今ハウスの中がどんな状態なのかを24時間いつでも数値で確認できるようになりました。

①-2. 経験の裏付けが生んだ驚きの成果

職人の勘を数字に置き換えた結果、驚くべき成果が現れました。

  • 最高品質(A級品)の割合が3倍に向上

  • 平均糖度が「プラス1.5度」アップ

さらに大きな収穫は、ベテラン農家さんが水をまく時間、窓を開けるタイミングが数字で証明されたため、経験の浅い若手スタッフでも同じように高品質なマンゴーを作れるようになったことです。

①-3. DX支援のプロが解説💡ここが成功のポイント

この事例の素晴らしさは、ベテランの技術をITで見える化して地域の財産にした点にあります。

大切なのは、今ある現場のノウハウをデータとして残し、働く人がより楽に、より高い成果を出せるようにすること。

今やっているベテランの作業を、数字や写真で記録してみるという小さな一歩から、ローカルDXは始まります。

事例②【泡盛×バイオ】ゴミがお宝に?菊之露酒造が挑む循環型DX

宮古島を代表する酒造メーカーの一つである、菊之露酒造さん。

伝統的な泡盛造りを守り続ける一方で、長年、ある「頭の痛い課題」を抱えていました。

それは、泡盛を造る過程で大量に出てしまう「もろみ粕」の処分です。

これまではコストをかけて廃棄処理せざるを得ず、環境への負荷も含めて地場産業共通の悩みとなっていました。

そこで挑戦したのが、最先端のバイオ技術やデータ管理を掛け合わせた、循環型のスマート化(サステナブルDX)です。

②-1. 捨てるものを、次の産業のバトンに変える

菊之露酒造は、大学発のスタートアップ企業と連携。

これまでゴミとして捨てていたもろみ粕を、独自の技術で高級マングローブガニの飼料へと生まれ変わらせる取り組みを始めました。

ただエサにするだけでなく、製造から流通までのデータを一元管理することで、安定した品質の養殖ビジネスとして成り立たせる仕組みを構築したのです。

②-2. 「お困りごと」から新しい特産品が生まれた

課題をテクノロジーで逆転させた結果、次のような成果が見え始めています。

  • 廃棄物処理コストの大幅な削減

  • 「宮古島産のマングローブガニ」という新たな特産品の誕生

地元の伝統を守りながら環境にも配慮する、新しい島のブランド価値を手に入れました。

②-3. DX支援のプロが解説💡 ここが成功のポイント

この事例のポイントは、自社の中だけで解決しようとせず、外部の技術をうまく繋いだことにあります。

中小企業が1社だけで新しいシステムや技術を開発するのは不可能です。

しかし、「うちにはこんな課題(もろみ粕)がある」と発信し、それを解決できる外部のパートナーとデータを共有し合えば、自社だけでは生み出せなかった大きな価値が生まれます。

沖縄の地場産業こそ、こうしたオープンな横の繋がりにDX成功の大きなチャンスが隠されています。

まとめ:現場を置いてけぼりにしない、沖縄らしいDXとは

今回ご紹介した「マンゴー農家」さんと「菊之露酒造」さんの事例に共通しているのは、どちらも現場で働く人が主役になっているということです。

実は先日、宮古島出身の経営者の方とお話しする機会がありました。

その際、「島(地元)の人間は、どれだけ便利になると言われても、現場のつながりや、これまで培ってきた人の温かみを無視したやり方は受け入れないよ」とおっしゃっていたのが非常に印象的でした。

まさに、その通りだと思います。

どんなに素晴らしい最先端のシステムであっても、現場の方々が置いてけぼりになってしまっては意味がありません。

私たちが沖縄でDXを支援する際に最も大切にしているのは、現場の皆さんが毎日笑顔で、無理なく使えるツールであることです。

今ある地元の素晴らしい技術や文化を、次の世代へ繋ぐための手段としてテクノロジーを活用する。

それこそが、沖縄の中小企業に本当に必要なDXの姿ではないでしょうか。

「うちの会社でも、マンゴー農家さんのように『長年の経験』を次の世代に残せるだろうか?――」

そんな風に少しでも未来のヒントが見つかるきっかけになれば幸いです。

<この記事の参照URL一覧>

事例①:宮古島のマンゴー栽培スマート化
【KDDI 公式プレスリリース】沖縄県宮古島市における、ITを活用したマンゴー栽培効率化への取り組みについて
【総務省 公式事例集】 ICTを活用したマンゴーの安定生産と栽培促進

事例②:菊之露酒造のサステナブルDX
【沖縄科学技術大学院大学(OIST)公式ニュース】OISTアクセラレーター採択スタートアップ2社と菊之露がMOUを締結


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